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『ジュニア』(1994年アメリカ映画)

JUNIOR


ムキムキシュワちゃんが妊婦(夫)に!

男女逆転シチュエーションの中で、笑いながらも、ジェンダー問題について考えさえてくれる時代先取り(?)コメディ。



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妊娠出産は女性の特権であり女性だけに与えられたこの上ない喜びではありますが、きついつわりや陣痛の時に「この苦労、男にも味あわせてみたい」と思う女性は有史以来多くいたようで、映画やドラマでもそんな風に叫ぶ女性の姿を見たことはありませんか。

もっとも最近わたくしがサポートに伺ったお宅では、イクメンご主人が「『いいなー、ぼくもおっぱいあげることが出来たらいいのに』と言っています」というお母さんの言葉も聞きました。

いずれにせよ「もし男性が妊娠することができたら?」というテーマは、科学の進歩とともに人工授精やクローンが現実のものとなった今は、よりリアルに感じられるかもしれません。

『ジュニア』は四半世紀も前の1994年製作されたコメディ映画です。

冷静沈着タイプの科学者アレックスは、習慣性流産治療のための新薬を開発、いよいよ認可が下りるという直前にキャンセルとなり、絶望して祖国オーストリアへ帰国しようとします。そこへ研究パートナーである産科医のラリーから、冷凍卵子を使って秘密裡に人間で実績を証明すれば、アメリカはダメでもカナダなら認可される、と説き伏せられ、なんとアレックスの身体に彼の精子を受精させた受精卵を注入します。子宮がないのに!と思いますが、腹膜のすきまに受精卵を注入し、新薬やホルモン剤を投与することで、受精卵はみごとに赤ちゃんへと成長していきます。

このアレックスを演じているのが、シュワちゃんの愛称でおなじみの元祖マッチョマン、『ターミネーター』で有名なアーノルド・シュワルツェネッガー。筋肉隆々のシュワちゃんが妊娠するというミスマッチで笑わせるコメディではあるのですが、男女の役割を考えさせるセリフやシチュエーションが随所にちりばめられ、

25年以上前の作品ながら、古さを感じるどころか、ジェンダーがやっと一般的テーマになってきた今こそ、改めて気づかせてくれることがあります。

当初は3か月まで卵子を成長させることが出来れば、それで実験は成功、本当に出産までもっていくつもりはなかったアレックスですが、きついつわりを経て超音波で赤ちゃんを確認し、心音を聞くにつれこのまま子どもを自分のお腹で育てたいと思うようになります。「子どもを産むのは女に任せて、男はラクをするもんだ」と言うラリーに「身ごもる喜びを知れば君も僕と同じことを考えるさ」というアレックスは、冷淡なサイエンティストから、お腹の出たふとっちょでいつも笑顔が優しい男性へ。同僚も「なぜか最近輝いているね」と言われる変貌ぶり。

妊娠による幸福感は男でも女でも、ひとを輝かせるものなのですね!ラリーもそんなアレックスの変化を認め、無事な出産まで秘密を守り協力することを決意します。ところが、そんなアレックスの妊娠に気づいたのが卵子の低温保存を研究するダイアナ博士。生命の神秘を解明しようとしている同分野の科学者としてはその大発見を喜ぶかと思いきや、パニックに陥り「女の神聖な役割を奪うの?」と怒りまくります。ダイアナ博士は、映画の冒頭では「女の一生は痛みに耐える一生なのよ」と男女の不公平を愚痴っていたのですが、いざアレックスが妊娠していると知ると、思わず「妊娠は女性の神聖な特権」と科学者らしからぬ言葉が口をついて出てしまうのです。

映画はコメディですから、もちろんハッピーエンドです。でも、そのハッピーなエンドシーンを観て気が付くのは、「父性」「母性」は役割分担のために作られた言葉で、実は子供の前では性差はなくそこにあるのは“parenthood”「親であること」ではないか、ということです。そんな親子の深淵まで考えさせてくれるこの作品の監督は、『ゴーストバスターズ』シリーズで知られるアイバン・ライトマン。彼の息子が前回ご紹介した『タリーと私の秘密の時間』のジェイソン・ライトマンです。父子で赤ちゃんをめぐる不思議で心温まるな物語を紡いでいたんですね。






 
 
 

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